在職老齢年金2026年改正で「働き損」はどれくらい減る?
2026年4月改正で「働き損」は大幅緩和。給与+年金65万円まで全額支給、超過分も半額カットのみ。年30万〜100万超の手取り増ケース多数。
目次(23項目)
結論から先に
2026年4月施行の在職老齢年金制度改正で、「働き損」現象は大幅に緩和されます。改正前は給与+年金合計が月51万円を超えると超過分の半額が年金カットされ、頑張って働いても手取りがほとんど増えない構造でした。改正後は基準が月65万円に引き上げとなり、ほとんどの再雇用・嘱託契約者が全額支給対象になります。基準を超える場合でも超過分の半額カットのみなので、「給与1万円増えても必ず手取りは5,000円プラス」が保証されます。経営者・管理職経験者・専門職で年間30万円〜100万円超の手取り増となるケースが多数発生します。
どんな場合に当てはまるか
65歳超で正社員継続中
60歳定年→65歳までの再雇用後、さらに65歳超で正社員継続するケース。給与は現役時より下がっていても、月30〜50万円のレンジに該当する方が多く、改正の恩恵を受けやすい層。
嘱託・専門契約で高めの報酬
医師・大学教授・弁護士・税理士・会計士・経営コンサルタントなど、専門性で高報酬を維持する方。月給50〜100万円のレンジに多く該当。
中小企業の経営者・役員
オーナー経営者として65歳超で役員報酬を受けている方。改正前は意図的に役員報酬を抑えて年金を全額もらう「報酬調整」が広く行われていましたが、改正で報酬を本来額に戻せます。
大企業の顧問・アドバイザー職
退職後にOB契約・顧問契約で報酬を受ける方。月30〜80万円の報酬帯が多く、年金との合計が新基準内に収まりやすい。
公務員出身者の再就職
公務員定年後の再就職先(外郭団体、関連企業)で月給30〜50万円を受ける方。共済年金時代の厚生年金部分も対象になります。
例外状況
改正で影響が小さい人
- 給与+年金合計が月50万円以下:もともと全額支給で変化なし
- 給与+年金合計が月100万円超:依然として大きくカット(カット幅は減るが)
- 老齢基礎年金(国民年金)のみ受給者:在職老齢年金の対象外
- 自営業者・フリーランス:そもそも対象外
引き続き「働き損」感がある層
給与月80万円超の高所得層では、(給与+年金 − 65万円)÷2 の式で年金カット額が大きく、依然として「働き損」感が残ります。例えば給与月100万円・年金月25万円なら(125-65)÷2=30万円カットで年金月5万円程度。この層は完全な改善ではない点に留意。
配偶者の加給年金
65歳前後の配偶者(妻または夫)がいて加給年金(配偶者加給:年約40万円)を受給中の場合、本人の老齢厚生年金が一部支給停止になると加給年金もゼロになるケースがあります。今回の基準引上げで加給年金も復活する人がいます。
費用・リスク・注意点
計算式の確認
- 旧基準(〜2026年3月):(賃金月額+年金月額 − 51万円)÷ 2 = 支給停止額
- 新基準(2026年4月〜):(賃金月額+年金月額 − 65万円)÷ 2 = 支給停止額
賃金月額は標準報酬月額+(過去1年の賞与÷12)。
ケース別の改善額(年間)
ケースA:給与月45万円・年金月15万円
- 旧:(60-51)÷2=4.5万円停止、年金月10.5万円、年126万円
- 新:(60-65)÷2=マイナス→停止ゼロ、年金月15万円、年180万円
- 年間54万円の改善
ケースB:給与月55万円・年金月20万円
- 旧:(75-51)÷2=12万円停止、年金月8万円、年96万円
- 新:(75-65)÷2=5万円停止、年金月15万円、年180万円
- 年間84万円の改善
ケースC:給与月65万円・年金月25万円
- 旧:(90-51)÷2=19.5万円停止、年金月5.5万円、年66万円
- 新:(90-65)÷2=12.5万円停止、年金月12.5万円、年150万円
- 年間84万円の改善
ケースD:給与月80万円・年金月25万円
- 旧:(105-51)÷2=27万円停止、年金月0円(上限)、年0円
- 新:(105-65)÷2=20万円停止、年金月5万円、年60万円
- 年間60万円の改善
「働き損」が残るケース(給与月100万円・年金月30万円)
- 旧:(130-51)÷2=39.5万円停止、年金月0円、年0円
- 新:(130-65)÷2=32.5万円停止、年金月0円(上限)、年0円
- 改善ゼロ(年金月額より停止額が大きい場合は支給ゼロのまま)
給与増のメリットが必ずプラスになる仕組み
新制度では給与1万円増→(給与+年金)合計1万円増→年金停止額の増加は最大5,000円(半額)。差し引きで給与増分の少なくとも半額は手取りに残ります。改正前は超過分の半額がカットされたものの基準額(51万円)を超えれば即時に減額が始まったため、「働き損」感が強く感じられました。
社会保険料の影響
新制度でも給与に対する厚生年金保険料・健康保険料は引き続き徴収。働き続けて保険料を払う分、将来の年金額がさらに増える(在職定時改定で毎年10月反映)。総合的には「働く方が得」のバランスがより明確になります。
配偶者加給年金への影響
本人の老齢厚生年金が支給停止になっていると、加給年金(年約40万円)もカットされます。改正で本人の年金が復活した場合、加給年金も復活し、さらに年40万円の増額になることも。
在職定時改定との相乗効果
2022年4月から始まった在職定時改定(在職中の保険料支払いを毎年10月の年金額に反映)と組み合わせると、働き続けるほど年金額自体も増えていきます。改正で「働く損失」が減ったことで、定時改定の効果もより活きてきます。
注意事項
- 自営業・フリーランス収入は在職老齢年金の対象外(影響なし)
- 賞与も含めた月額換算で計算
- 年金カットされていない人は変化なし
- 個別の試算は年金事務所・社労士に相談
2027年以降の動向
基準額65万円が今後さらに引き上げられるか、完全撤廃されるかは未定。労働力人口減少と高齢者就労促進の必要性から、5〜10年単位での再見直しが見込まれます。
よくある質問
Q. 今まで年金が完全停止だった人は、いきなり全額支給になりますか?
給与+年金合計が65万円以下なら全額支給。65万円を超えていても支給停止額の計算が変わって部分的に再開する人が多数です。完全停止の方も、新基準で計算し直すと支給再開になる可能性が高いです。
Q. 改正を知らずに勤務時間を抑えていた場合、過去に遡って増額されますか?
過去に遡及はされません。改正は2026年4月分以降の年金額に適用。それ以前の支給停止額は変更されません。今後の働き方を見直すきっかけにしてください。
Q. 厚生年金基金や企業年金との関係は?
在職老齢年金は公的年金(老齢厚生年金)のみが対象。厚生年金基金(代行部分を除く加算部分)や企業年金(DB、DC)はこの制度の対象外で、引き続き全額受給可能。
Q. 65歳未満で特別支給の老齢厚生年金を受けている人はどうですか?
60〜64歳の特別支給の老齢厚生年金にも在職老齢年金制度が適用されますが、基準額は別途定められています。こちらも段階的に見直し中で、最新情報は日本年金機構・年金事務所で確認を。
参考資料
- 厚生労働省「在職老齢年金制度の見直しについて」— 制度の詳細
- 厚生労働省「年金制度改正の概要」— 全体の改正動向
- 日本年金機構「年金額の改定」— 改定スケジュール
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参考資料
掲載時点で確認した資料です。制度やガイドラインは変わることがあるため、手続き前には各機関の最新情報も確認してください。
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